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社内ポータルサイト刷新の進め方:提供価値から考える、社員が毎日使いたくなるイントラのポイント

イントラネット刷新の進め方
目次

「使いづらいから刷新しよう」で始まるプロジェクトの落とし穴

社員アンケートでイントラが使いづらいという声が積み上がっている。そろそろ刷新しよう。
社内ポータルサイトの改修プロジェクトは、たいていこうした社員の不満を受けて始まります。

一見、正しい始まり方に思えます。ただ、ここに最初の落とし穴が潜んでいるのです。

そもそも、使いづらいの中身は、具体的に何を指しているのでしょうか。

  • 検索で目当ての規程にたどり着けないのか。
  • トップページに自分と関係のある情報がないのか。
  • それとも、そもそもどこに何があるか分からないのか。

この正体を突き止めないまま、なんとなく使いづらいという声を出発点に作り直すと、最新のツールを入れてデザインを一新しても、社員が期待するものにはなりません。半年後、また同じ不満が積み上がります。

イントラは、全社員が毎日開く数少ないチャネルです。だからその作り直しは、器の入れ替え作業ではなく、この会社は社員にどんな体験を提供するのかを問い直すプロジェクトになります。

イントラを刷新したい、あるいは新しく作りたいと考えている方に向けて、現状把握から目的の定義、ハードとソフトの融合、そして情報が集まり続ける運用まで、失敗しないための順番をお伝えします。

目次

  1. 「使いづらいから刷新しよう」で始まるプロジェクトの落とし穴
  2. ポータルの成否は「何のためのイントラか」の定義で決まる
  3. なぜ目的の定義から始めるのか
    1. イントラは文化醸成のチャネルだから
    2. 箱はどの会社も持っている。差がつくのは目的と設計だから
  4. 失敗しない刷新の5ステップ
    1. ステップ1 「使いづらい」を分解する
    2. ステップ2 「何のためのイントラか」を定義する
    3. ステップ3 ハードとソフトを融合させて設計する
    4. ステップ4 情報が集まり続ける運用ルールを敷く
    5. ステップ5 AIで検索性を磨き続ける
  5. 一人で作らない。他組織との連携が推進力になる
  6. よくある質問(FAQ)
  7. sakyのひと言コメント

ポータルの成否は「何のためのイントラか」の定義で決まる

ポータル構築の成否を分けるのは、ツール選定でもデザインでもありません。
何のためのイントラなのか、社員にどんな価値を提供するのか。この定義を最初に置けるかどうかです。

日々使っていると、イントラが提供している価値は意外なほど見落とされています。リニューアルは、その価値を経営層と社員を含めて改めて確かめ直せる、数年に一度の機会です。この機会をツールの乗り換えだけで消費してしまうのは、あまりにもったいないです。

イントラ改修の流れは次の順番になります。

社内ポータル刷新5ステップ

  1. 社員の声とデータで、現状の課題を正確に把握する
  2. イントラの目的、つまり提供価値と「あるべき理想像」を定義する
  3. 目的に照らして、ハードとソフトを融合させて設計する
  4. 情報が集まり続ける運用ルールを敷く
  5. AIで検索性を磨き続ける

多くのプロジェクトは3のハード選定から入ってしまいます。順番をひとつ手前に、いや、ふたつ手前に戻すこと。この記事で最も伝えたいのはそこです。

なぜ目的の定義から始めるのか

イントラは文化醸成のチャネルだから

社内には数多くのコミュニケーション施策がありますが、全社員が毎日、業務のために必ず触れるチャネルはイントラだけです。ここでどんな情報に触れ、どんな体験をするか。それは日々の業務効率だけでなく、その会社の文化醸成にまでつながります。トップの考えが自然と目に入る会社と、総務のお知らせしか流れてこない会社とでは、数年単位で組織の空気が変わっていきます。

実際、社内の情報流通の質は社員の貢献意欲と連動します。

エビデンス
社内コミュニケーションに課題がない企業では従業員エンゲージメントが高い割合が50%だった一方、課題がある企業では22%にとどまる。
社内の情報流通の質はエンゲージメントに直結するという結果
出典:HR総研「社内コミュニケーション」に関するアンケート2024

これほどのチャネルの設計を、今より使いやすければいいという消極的な目標で進めるのは、機会損失と言うほかありません。

箱はどの会社も持っている。差がつくのは目的と設計だから

総務省の令和6年通信利用動向調査の企業編を見ると、クラウドサービスを利用する企業のうち57.5%が社内情報共有・ポータルを利用しています。ポータルという器自体は、すでに過半数の企業が持っているわけです。それでもうちのイントラは機能していないという声が絶えないのは、差が器ではなく、目的の明確さと設計、運用でついているからです。

エビデンス②
クラウド利用企業の57.5%が「社内情報共有・ポータル」を利用
ポータル基盤の保有は過半数で一般化しており、成否を分けるのは目的定義と設計・運用
出典:総務省 資料名:令和6年通信利用動向調査報告書(企業編) 年:2025年公表(調査時点2024年8月末)

失敗しない刷新の5ステップ

ステップ1 「使いづらい」を分解する

最初にやるべきは、要件定義でもベンダー比較でもなく、現状の正確な把握です。やることは大きく三つあります。

一つ目は、社員の声を聞くこと。定量調査で、どの業務のときに何に困っているかを構造的に把握し、定性インタビューで、使いづらいという言葉の裏にある具体的な場面を掘り下げます。検索しづらいという回答ひとつとっても、検索機能の精度が低いのか、そもそも探している情報が載っていないのかで、打ち手はまったく変わります。

次に、データでの可視化です。現行イントラのアクセスログを分析し、どのページが見られていて、どこで離脱しているのか、検索で何のキーワードが打たれ、何がヒットしていないのかを把握します。声は不満の強い人に偏りがちですが、ログは全社員の実際の行動を映します。声とデータの両方を突き合わせて初めて、課題はなんとなくから特定された問題に変わります。

そして最後に、頻度の高いユースケースの点検です。社員がイントラを使う場面のうち頻度の高いもの、たとえば経費精算、規程やマニュアルの確認、勤怠や各種申請、他部門への問い合わせ先探しなどを抽出します。その一つひとつについて、トップページから3クリック以内に目的にたどり着けるかを目安に、実際に動線をたどってみる。画面は見やすいか、途中で迷う箇所はないか。使いづらさの大半は、この高頻度ユースケースの動線上に潜んでいます。全機能を均等に点検するより、利用の8割を占める数個のユースケースを徹底的に磨くほうが、社員の体感は大きく変わります。

ここで、実務的な数字をひとつ。コクヨが2017年に実施した調査では、ビジネスパーソンが書類を探す時間は1日平均約20分、年間で約80時間に相当するとされています。

エビデンス③ 出典:コクヨ株式会社 資料名:紙書類を探す行為に関する調査(週5日以上書類を検索する有職者1,031名対象) 年:2017年 数値:書類を探す時間は1日平均約20分、年間約80時間 示すこと:「探す」行為そのものが大きな生産性損失であり、探しやすさの改善は投資対効果を語れる領域

紙書類の調査ですが、構図はデジタルでも同じです。現状把握で探す時間の実態が見えれば、経営層への投資説明にもそのまま使えます。

ステップ2 「何のためのイントラか」を定義する

課題が特定できたら、イントラの目的、つまり提供価値を定義します。業務に必要な情報に最短でたどり着ける場所なのか。会社の今とこれからが分かる場所なのか。社員同士の知恵がつながる場所なのか。自社にとってのあるべき理想像を、言葉にするところまでやり切ります。

このとき大切なのは、IC担当者だけで決めないことです。経営層と社員を巻き込み、うちのイントラは何のためにあるのかを一緒に確かめ直す。このプロセスそのものに価値があります。リニューアルという機会がなければ、この問いが全社で話題になることは、まずありません。

KPIは理想像に準じて設計します。探せる場所が理想なら検索成功率や問い合わせ削減数。会社が分かる場所なら経営メッセージの到達率や記事への反応。理想像なきKPIは、閲覧数を追うだけの数字遊びになります。

ステップ3 ハードとソフトを融合させて設計する

目的が定まって、ようやく設計です。ここでの鍵は、ハードとソフトを別々に考えないこと。器としてのツールと、情報や体験の設計を、行き来しながら固めていきます。

ハードは目的に照らして選びます。理想像を実現できる器はどれか。選定基準はこれに尽きます。機能一覧の比較表から入ると、使わない機能のために費用を払うことになります。

ソフトの起点は、社員が求めている情報は何かです。ステップ1の調査結果がここで効いてきます。経費精算、規程の確認、他部門の動きの把握といった、社員がいつも使う目的に最短で到達できる動線を設計する。カテゴリを組織図の写しにせず、社員の業務動線で切るのもこの一環です。総務部のページではなく、申請・手続き。探す側の頭の中の言葉に合わせます。

もうひとつ、見落とされがちなのが情報の量です。
長年運用されたイントラで最も多い問題は、情報が足りないことではなく、溢れすぎていること。

掲載されたままの古いお知らせ、役目を終えた特設ページ、重複するマニュアル。
情報が多いほど、本当に必要な情報は埋もれていきます。刷新は、この蓄積を一度精査する絶好の機会です。

全コンテンツを洗い出し、残す、統合する、捨てるを仕分ける。そのうえで、残した情報を社員の使う場面に沿って再整理し、必要な情報にアクセスしやすい構造へ組み直します。地味な作業ですが、この情報の精査と構造設計こそが使いやすさの正体で、どんな高機能なツールもここを省いては機能しません。

何を乗せるかは、イントラの提供価値に依存します。会社の今が分かる場所を掲げるなら経営メッセージや部門の動きが一等地に来るべきですし、業務効率の場所なら申請導線が主役です。優先順位で迷ったら、ステップ2の理想像に立ち返る。この往復ができている状態が、ハードとソフトが融合している状態です。

なお、大企業では、グループ全体のイントラと各社独自のイントラをそれぞれ持っているケースが少なくありません。この場合、まず機能や掲載情報が重複していないかを確認します。

同じ規程や申請導線が両方に存在すると、どちらが正か分からなくなり、更新漏れの温床になります。そしてもうひとつ、より本質的な問いがあります。個社の社員が、わざわざグループイントラを見に行く理由は何か

日常業務が個社イントラで完結する以上、グループイントラには、グループ全体の経営方針、他社の取り組み、グループ横断の制度といった、ここでしか得られない価値を明確に定義しなければ、存在しても訪れられないサイトになります。器の設計以前に、提供価値の定義をイントラごとに行う必要があるということです。

ステップ4 情報が集まり続ける運用ルールを敷く

どれだけ設計が良くても、公開後に情報が集まらなければ、イントラは静かに廃れていきます。情報が集まらないから検索しても出てこない。だから社員が見なくなる。見られないから部門が載せなくなり、さらに情報が集まらなくなる。この悪循環を防ぐルールを、公開前に敷いておきます。

まず、各部門に編集担当を置くこと。管理者が全部門の情報を吸い上げるのは不可能です。各部門に情報の載せ手を置き、管理者はその人たちを支援する編集部として機能させます。社内に何かを行き渡らせたいとき、号令ではなく各組織のキーマンを介する。これはイントラに限らない鉄則です。

次に、投稿のハードルを下げること。情報が集まらない最大の理由は悪意ではなく、面倒だからです。タイトルと要点3行で成立するテンプレートや、チャットで送れば管理者側で整形する代行ルートを用意します。

三つ目は、イントラの情報が公式であり、それを参照するように宣言することです。重要な通達や規程は必ずイントラに置き、メールやチャットにはリンクだけを流す。この一次情報の原則を経営層から宣言してもらうと、イントラは見なくてもいい場所から、見ないと業務に支障が出る場所に変わります。

最後に鮮度です。古い情報が放置されたイントラは、これ、古かったんだけどという一度の体験で信頼を失います。ページごとに更新責任者と見直し期限を設定し、定期的に情報を見直すサイクルを回します。ステップ3の精査が刷新時の大掃除だとすれば、こちらは日々の掃除にあたります。

ステップ5 AIで検索性を磨き続ける

そして今後、大きなポイントになるのがAIによる検索性の向上です。
生成AIの普及で、社員の情報探索の期待値は、キーワードで一覧が出るから、質問したら答えが返ってくるへと変わりつつあります。出張時の宿泊費の上限はいくらかと自然文で聞けば、規程の該当箇所を踏まえた答えが返ってくる。こうした体験が、社内でも当たり前に求められる時代になります。

ただし、順番を間違えてはいけません。AIは、整った情報基盤の上でしか機能しません
情報がポータルに集まっておらず、古い規程と新しい規程が混在した状態でAI検索を載せれば、間違った答えを自信満々に返す仕組みができあがるだけです。ステップ1から4があってこそのステップ5。裏を返せば、ここまでの土台を作った会社にとって、AIは探す時間を一気に削る強力なレバーになります。

一人で作らない。他組織との連携が推進力になる

ここまで読んで、これは社内広報担当だけでは完結しないなと感じた方は、正しい感覚です。イントラ刷新は社内を巻き込む大きなプロジェクトであり、初期段階から他組織との連携体制を設計しておくことが、成否を分けます

まず、情報システム部門とは二人三脚で進めます。ハードの選定、セキュリティ要件、人事システムや勤怠システムなど既存ツールとのデータ連携は、情シスの協力なしには一歩も進みません。ステップ3の融合設計は、社内広報側が体験の理想を語り、情シス側が技術の現実を返す往復の中でしか実現できないものです。要件が固まってから相談するのではなく、理想像を描く段階から同じテーブルに着いてもらいます。

人事や経営企画とは、目的とKPIでつながります。イントラを文化醸成やエンゲージメントのチャネルと位置づけるなら、その指標は人事や経営企画が追う経営アジェンダと重なります。理想像づくりに参画してもらえれば、イントラ刷新は情報システムの入れ替えではなく組織づくりへの投資として社内で語られるようになり、予算や協力の得やすさが変わってきます。

各部門と経営層には、「当事者」になってもらいます。調査への協力、編集担当の引き受け、そして経営層には旗振り役。いずれも完成してからお願いするのでは遅く、構想段階から巻き込むことで、自分たちのイントラという当事者意識が生まれます。この当事者意識が、公開後の定着スピードを決める見えない資産です。

よくある質問(FAQ)

Q. イントラを最新ツールに替えるだけでは解決しませんか?
A. ツール刷新で改善するのは操作性や検索機能といった摩擦の部分です。何のためのイントラかという目的と、情報が集まる運用がなければ、新しい器でも同じ課題が再現されます。ツール選定は目的と理想像を定義したあと、それを実現できる器はどれかという基準で行うのが正しい順番です。

Q. 中小企業でも定量調査やログ分析まで必要ですか?
A. 数十名規模なら、大がかりな調査は不要です。ただ、使いづらいの正体を特定してから作ることは規模に関係なく必要なプロセスです。全員に5問程度のアンケートを取ったり、数名に15分ずつ話を聞くだけでも、思い込みと実態のズレは十分に見えてきます。

Q. AI検索はすぐに導入すべきですか?
A. 情報の一元化と鮮度管理ができていることが前提です。土台が整っていない段階でのAI導入は、誤答による信頼失墜のリスクのほうが大きくなります。まずステップ4までを固め、そのうえでAIを載せるのが安全な順番です。

編集長のひと言コメント

私自身、大規模組織でイントラの運用に関わる中で痛感したのは、日々運用していると「このイントラは何のためにあるのか」「どんな価値を社員に提供するのか」という問いが、いつの間にか誰の頭からも消えてしまう、ということでした。リニューアルは、その問いを経営層と社員を巻き込んで立て直せる、数年に一度の機会です。だからこそ、まずは社員の声をしっかり聞くことから始めてほしい。 「使いづらい」の裏側にある本当の期待が見えたとき、作るべきイントラの姿は自然と定まります。

そして、私が強調したいもう一つのポイントが、取り組むあなたにとっての代えがたい経験値となる点です。
会社全体を巻き込んだ大型プロジェクトとして、非常に大きな経験になることは間違いありません。それは、あなたのキャリアにとって大きな意味をもつことになるでしょう。
実際に、私の場合はそうでした。イントラ改修で社員にどんな価値提供ができるのかを突き詰めて考え、それを社内の多くの関係者を巻き込んで、形にしていく。大変なことも事実ですが、そこで得られた経験がその後の社内の人間関係を円滑にもしましたし、自分のキャリアでも意義があったと本当に感じます。

会社にとっても、個人にとっても、ポータル刷新のプロジェクトは非常に有意義なので、労を惜しまず取り組んでみると、ローンチ後には違った景色が見られるはずです。

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執筆者

総合シンクタンク、事業会社をはじめ、ブランディング・コミュニケーション領域で20年を超える実績を持つ。特に、インナーコミュニケーションでは、数百名のオーナーを抱える大規模チェーンや社員数7万人・1兆円規模グループで戦略立案から実践まで統括。

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