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社内広報は何から始める? ひとり・未経験から動き出す最初の90日の進め方

「来月から社内広報をお願い」
そう言われても、いったい何から始めたらいいのかわからない。予算もはっきりしない。何が正解かもわからないまま、気づけば一人で会社の中の発信をすべて背負っていた…。
いまこのページを開いているのは、たぶんそういう人ではないでしょうか。

社内広報は、必要だとわかっていながら手が回っていない会社が多い領域です。
HR総研が2025年に行った調査では、約6割の企業が社内コミュニケーションに課題を感じると答えています。
社員同士のコミュニケーション不足は業務の妨げになると見る企業も、8割を超えました。やったほうがいいことは誰もが知っている。なのに人も型も足りない。最初の壁は、たいてい何から手をつけるかです。

この記事では、社内広報を一人で、しかも未経験から任された人に向けて、最初の90日でやることを順番に記載しています。単に理論ベースではなく、実際に体が動く順番にこだわりました。スタートアップ・中小企業から大企業の広報部に配属された人まで使えるよう、規模による違いにも触れます。

目次

そもそも社内広報とは? 社外広報との違いと一人広報の現実

社内広報は、社員に向けた発信と対話で、会社と社員のつながりを強くする仕事です。
インナーコミュニケーションやインターナルコミュニケーションとも呼ばれ、会社の規模の大きさに限らず、社員のエンゲージメント向上はもちろん、売上といった成果創出にも繋がるため、昨今重要性が高まっています。
また、同じ広報でも、メディアや世間という外に向かう社外広報とは相手が違います。届ける相手が身内の社員になる。そこに別の難しさが生まれます。

担う仕事はいくつもあります。

  • 経営の考えを、社員に伝わる言葉へ翻訳して届ける。
  • 社内報やイントラ、社内SNSといったチャネルを動かす。
  • 社員同士、経営と現場の交流をつくる。
  • 現場の声を拾って経営へ返す。

本来ならチームで分けるこれらを、一人広報はすべて自分で抱えます。やることは無限に出てくるのに、時間も手も一つしかない。この現実を先に飲み込んでおくと、消耗せずに続けられます。全部やるのではなく、何からやるかを決める。それがこの記事のテーマです。

施策の前に、戦略を経営課題とつなぐ

施策に手を出す前に、何のための社内広報かを経営の課題と結びつけて決めておきます。
ここが曖昧なまま社内報やイベントを始めると、こなすこと自体が目的になり、やった気で終わってしまうことに陥りがちです。

戦略といっても、難しく構える必要はありません。まずは次の3つに、自分なりの仮説を持つところから始めましょう。

  • 経営は社内広報に何を期待しているのか。一体感か、理念の浸透か、離職を止めることか。
  • いま情報が止まっている場所はどこか。経営と現場の断絶か、部署の壁か、現場の声が上に届かないことか。
  • 半年後、どんな状態でいたいか。社員が会社の向かう先を自分の言葉で語れている、くらいまで具体に落とせるのが理想。

この3つに答えると、打つべき順番が見えてきます。ここを飛ばすと、流行りの施策を追うだけになります。

ただ、自社の課題に本当に効く形をどう設計するかは、会社ごとに答えが変わります。一般論で書けるのはここまでで、実際の落とし込みは個別の作業です。まずは3つの問いを、自分の言葉でメモするところから始めてみてください。

では、いよいよ最初の90日の歩み方にここから入っていきます。順に詳細を見ていきましょう。

最初の30日は、施策より現状把握

着任して最初の30日は、発信しないでください。

社内報を作り始めるより先に、動いてインプットを集める時期です。発信の精度は、現状把握の深さで決まります。会社を知らないまま施策を打てば、的を外した結果となるでしょう。

この30日でやることリストはこちらです。

  • 各組織のキーマンを見つける
    理念やビジョンは、トップが号令をかけるだけでは現場に届きません。各部署で翻訳者の役を担う人を通って、はじめて浸透します。誰がその人かを早く掴むと、あとの動きが変わります。
  • 役員の考え方と志向を把握する
    社内広報に理解があって協力的なのは誰か、慎重なのは誰か。味方の地図を持っておきます。
  • 社長と話す機会をつくる
    月に一、二回でも定例を組めると理想です。社長が狙いを理解し、自分の言葉で発信できるようになれば、いちばんの協力者になります。
  • 自分の存在を社内に知ってもらう
    何か困ったらあの人に相談しよう、と思ってもらえる状態が目標です。時間はかかるので、まずは知られることから始めます。
  • 社員の生の声を聞く
    会社への期待や不満を、いろいろな職種の人に声をかけて集めます。一次情報はここでしか手に入りません。

あわせて、過去の社内報やイントラ、配信物を一通り見て、この会社の情報がどこをどう流れているかを掴みます。開封率や閲覧数といった数字が残っていれば、目を通しておきます。地味な一か月ですが、ここでの蓄積があとのすべてを支えます。

30日から60日で、小さく確実に動き出す

現状把握が進んだら、いきなり大きな企画ではなく、狙いを伝えながら小さな成功を積み上げていくのがよいでしょう。
一人広報にできることには限りがあります。掘るほどやることは増えますが、手応えの大きいところから一つずつ片づけます。
この時期にやることは、大きく2つです。

  • 何のためにやるのかを社員に伝える
    会社をもっと知れたり、交流が増えたり、社長と社員の距離が縮まるなど、社内広報が何をもたらすのかを言葉にして共有します。
  • 社長を近い存在にすることを先に置く
    社長が遠いままだと、立派な言葉も遠くにしか響きません。発信を増やす前に、まず親しみを持ってもらえるとよいです。

ここで、私が現場で効果を実感したポイントを3点共有します。

一つは、社長メッセージをメール配信一辺倒にせず、時折動画を盛り込むことです。
やはり映像と肉声というのは強力なコンテンツで、社長の本気度、ニュアンスの伝わり方や印象も大きく変わります。組織が大きいほど文章だけでは誤解が起きやすいので、動画の効きはむしろ強まります。
特に動画は皆さんも作ろうと考えるけど、労力もコストもかかるので悩むところなので、少し補足します。
すべてを動画にすればいいというわけでもありませんので、出しわけ例もぜひご参考ください。

▼動画はなぜ効くのか?

Forrester ResearchのMcQuivey博士は、1分間の動画が伝える情報量は文字に換算して約180万語、一般的なWebページ約3600ページ分に相当するという試算を示しています。また同社の調査では、社員は文書やメールを読むより動画を視聴する可能性が75%高いともされています。

▼内容別の動画・静的テキストの出しわけ例

二つ目は、社長の失敗談を載せたとき、いつもの倍を超える反応があったことです。
弱みや過去の失敗を正直に話すと、相手は親しみを感じ、信頼が深まります。完璧な経営者像より、人間らしい一面のほうが社員の心は動きました。

三つ目は、新しいチャネルを増やしすぎず、すでにあるイントラや朝会に乗せていくことです。
これも動き出しの現実的なやり方です。

60日から90日で、続く仕組みをつくる

単発の施策で終わらせず、回り続ける形に仕組み化するのが、この時期の仕事です。
一人広報は、自分が止まれば発信も止まります。個人の頑張りを、仕組みに変えていきます。

  • 1年分の広報カレンダーをつくる
    全社イベント、定例の社長発信、節目のメッセージを一年の地図に並べると、行き当たりばったりから抜けられます。
  • 出すものを型として決める
    毎月の社長メッセージも構成を決めておくと、毎回ゼロから考える負担が減ります。
    例:冒頭(最近の出来事にふれる)、中段(理念にちなんだ取り組みや考え)、末尾(来月に向けてやること)
  • キーマンを巻き込む
    最初の30日間で見つけた人を取材の協力者や各部署の発信担当にして、一人で抱えない土台をつくります。
  • 追いかける数字を決める
    メールの開封率でもイントラ記事の閲覧数でも反応の数でもいいので指標とする数字を決めましょう。数字を見始めると手応えが見え、次の一手の根拠になります。

社内報の具体的な作り方や、効果の測り方は、それぞれ別の記事で触れていく予定です。

会社の規模でインナーコミュニケーションとしての動き方はどう変わるか

社内広報の原則は規模によりません。ただ、伝え方とリアルの場のつくり方は大きく変わります。
ここは見落とされがちです。

データ上でも、HR総研調査(2025年)では、

企業の規模が大きくなるほど社内コミュニケーションの課題は目立ち、組織が複雑になるほど難しくなると示す。

大企業だからうまくいくわけではなく、規模ごとに別の難しさがあるということです。

例えば、数万人規模の大企業では、こう動きます。

  • 情報は伝わる途中で薄まるので、あれもこれもと欲張らず、理念やビジョン、全社戦略といった幹を伝え続けることに絞ること。その落とし込みは各組織のキーマンに任せていくこと。
  • 抽象的な話ばかりでは届かないので、要所で具体的な要素を混ぜ、現場の手触りは残すこと。
  • 全現場に足を運ぶのは難しい。社員総会やキックオフなど年に数回の場を大切にし、経営が遠くなったと感じたらタウンホールミーティングを開く。

社長が身近な中小企業では、勝手が違います。

  • 言葉より行動で示せる場面が多い。自分が提案したことを社長が実際にやってくれた実感は、何にも代えがたい信頼になる。
  • 朝会や週次、月次の定例で社長が顔を出せるなら、その場で社員の声をしっかり聞く。それがいちばんの社内広報になる。

自分がどちらの環境にいるかで、力を入れる場所を切り替えてください。

一人社内広報がやりがちな失敗と、その避け方

失敗のほとんどは、広げすぎと抱え込みの2つに集まります。
これは先に知っておくだけで避けられます。

  • 広げすぎて消化不良になる
    社内広報は掘るほどやることが出てきます。私自身、業務を抱え込みすぎて社内報の配信が遅れたことがあります。同じように疲弊する担当者も多く見てきました。やらないことを決める割り切りが時に大事です。
  • 一人で抱え込む
    トップからの要望を全部受け止めようとするとパンクします。周囲や上司、他部署に状況を開示するだけで、ほどける糸口が見つかることは多いものです。
  • 孤独に陥る
    社内に同じ仕事の仲間がいないからこそ、社外の勉強会やコミュニティで横のつながりを持つと、視野も気持ちも楽になります。
  • 成果が見えず消耗する
    追いかける数値はたくさん持たずに最初は絞って成果をみていきましょう。なかなか定量数値が見えづらいものもあると思います。それは、周囲の社員に「どうだった?」と声掛けして、定性面で印象を聞いて置けるとよいです。これらを通じて、手応えが見えればまた次のアクションに繋がっていきます。

そして、一人でできることには限界があります。外部の手や知見をうまく借りると、できる幅は大きく広がります。完璧を狙って抱え込むより、借りられるものは借りる。インナーコミュニケーションは会社にとってなくてはならない機能として、持続可能な状態を作ることが大事です。

90日の地図と、次の一歩

最初の90日を、もう一度たどります。

  • はじめの30日は現状把握。キーマンを見つけ、社長との関係をつくり、社員の生の声を聞く。
  • 30日から60日は動き出し。狙いを伝え、社長を近い存在にして、小さな成功を積む。
  • 60日から90日は仕組み化。年間カレンダーを引き、発信を定例にし、人を巻き込み、成果を可視化する。

この順番さえ押さえれば、何から始めればいいのかわからない状態からは抜け出せます。

ただ、型は同じでも、自社にどう当てはめるかは会社ごとに違います。自社の課題に効く社内広報をどう設計するか、一人で詰まったときにどう抜けるか。そうした問いを一緒に考える場も用意しています。まずは、経営の期待と、情報が止まっている場所と、半年後の理想像。この3つを自分の言葉で書き出すところからスタートです。

よくある質問

下記は社内広報になったばかりの人から、よく聞かれる質問をまとめたものです。
あわせてご参考ください。

Q. 社内広報(インナーコミュニケーション)は何から始めればいいですか

Answer
最初の30日は現状把握からです。いきなり社内報を作ったりアウトプットしようと焦らず、各部署のキーマンを掴み、社長との関係をつくり、社員の生の声を聞くことに時間を使います。発信はそのあとにする方が、結果的に効果的なインナーコミュニケーションが可能になります。

Q. 一人で社内広報を任されたら、まず何を考えますか

Answer
何のための社内広報かを、経営の課題と結びつけて決めることです。経営が何を期待しているか、情報流通のボトルネックはどこにあるか、半年後どんな状態になっていたいか。この3つに仮説を持つと、優先順位が見えてきます。

Q. 社内広報と社外広報は何が違いますか

Answer
向き合う相手が違います。社外広報はメディアや社会に対して、社内広報は社員に向けて発信します。対象が周囲の社員だからこその伝え方の工夫が必要であり、身内だからといって甘えて適当な発信をするのではなく、しっかりと設計することが大事です。

Q. 社内広報の効果はどう測りますか

Answer
メールの開封率やイントラのページ閲覧数、反応の数など、追える数字の中で影響度の高い箇所を一つ決めることから始めます。最初から完璧に測る必要はありません。施策の手応えが見えること自体に意味があり、それが次の改善につながります。

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執筆者

総合シンクタンク、事業会社をはじめ、ブランディング・コミュニケーション領域で20年を超える実績を持つ。特に、インナーコミュニケーションでは、数百名のオーナーを抱える大規模チェーンや社員数7万人・1兆円規模グループで戦略立案から実践まで統括。

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